“確定申告書の作成が終わり一安心、あとは納付するだけ”と胸をなで下ろしていたら、なんと手許に納税資金の余裕がない…。そんなときはどうすれば良いでしょうか。
所得税には、延納の制度があります。通常の納付期限までに納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付をおよそ2ヶ月半先延ばしできる制度です。ただし、延納期間中は納付を延期したい金額に対して年1.6%(平成30年3月現在)の利子税がかかります。ここで問題になるのが、“納付すべき税額の2分の1の金額も今すぐ準備することができない”場合です。さらには、利子税も発生するとなると頭をかかえてしまいます。そんなときに使えるのが、『振替納税』です。
振替納税とは?
振替納税とは簡単に言うと、税金の納税方法を言います。
現在日本における所得税の納税方法には(a)現金に納付書を添えて納付する方法、(b)電子納税する方法、(c)振替納税があります。このうち、(a)と(b)はよく利用される一般的なものですが、(c)についてはあまり聞きなれない納税方法だと思います。振替納税とは、指定した金融機関の預貯金口座から自動的に引き落とされて納税が行われる方法です。電気代やガス代など公共料金の自動振替と似ています。一度手続きを行うことで、次回以降は自動納付となるので上記(a)、(b)のように自ら納付の手続きをする必要がなくなるのです。振替納税にすると納付期限が、通常の納付期限よりもおよそ1ヶ月先になります(但し、1ヶ月先になるのは確定申告時のみ)。平成29年度の所得税ですと、申告期限、現金による納税及び電子納税の期限は平成30年3月15日ですが、振替納税による口座振替日は平成30年4月20日となっています。
振替納税のメリット
- 納税の先送り
振替納税を行うと納税を先送りすることができます。しかも延納のように「2分の1以上の額の納税」や「利子税」を支払う必要がありません。この仕組を活用すれば、単純に1ヵ月分の資金繰りに余裕が生まれることになります。資金繰りが大きな問題となる方にとってこれはありがたい制度です。 - 手間が省ける
振替納税を利用すると指定の口座から自動的に納税が行われます。わざわざ金融機関に出かけて行って納付する必要がなくなるため大変便利です。金融機関で長い時間待って納付を行う、という煩わしさから解放され、無駄な時間を減らすことができます。 - 延納と併用が可能
振替納税を利用しても期限までに全額納める余裕がない場合は、延納も利用することが可能です。「2分の1以上の額の納税」も振替納税時に行えば良いですし、「利子税」も振替納税の期限からの計算となるため、圧縮することができます。
注意点
- 残高不足等で延滞税がかかる可能性がある
振替納税を利用すると、指定された口座から自動的にお金が引き落とされるため、もし残高不足等になった場合は納期限の翌日から延滞税がかかります。そのため事前に忘れずに預金残高を確認しておく必要があります。 - 転居により所轄税務署が変わった場合は再度届出が必要
転居することにより所轄の税務署が変わった場合は、再度振替納税の手続きを行う必要があります。この手続を忘れてしまうと自動引き落としとされず、督促状が届き延滞税を払わなければならないという事態になりかねません。
振替納税の手続方法
口座振替依頼書に住所、氏名、金融機関名、預貯金口座名などを記入し、預貯金通帳に使用している印鑑を押して、納税地を所轄する税務署か預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書に記載した金融機関に提出してください。なお、提出期限は振替納税をしたい所得税の納付期限までとなっています。平成29年分所得税の場合は平成30年3月15日までになります。また、振替納税は基本的に予定納税にも適用されるので、予定納税の時に振替納税を行いたくない場合は、依頼書に記載のある部分を二重線で抹消しておいて下さい。