補助金と助成金の違い5項目|共通点と代表例もそれぞれ紹介

補助金と助成金の違い5項目|共通点と代表例もそれぞれ紹介

お金の支援・サポートが必要な人や団体に対して、国や地方自治体などから受け取れる返済不要の交付金には、補助金や助成金が挙げられます。補助金・助成金はいずれも同様の意味として使われる傾向にありますが、実はこの2つにはきちんとした違いが存在します。

今回は、補助金と助成金の違いを、5つの項目に分けて詳しく解説します。さらに、共通点と代表的な制度例も紹介するため、補助金・助成金の基礎知識を得たい人や、必要に応じて適切な補助金・助成金制度を活用したいと考えている企業担当者および個人事業主は、ぜひ参考にしてください。

 

1. 補助金と助成金の違いとは?

補助金と助成金は、どちらも大まかに国や地方自治体などから受け取れる返済不要の交付金であることから、混合されることも多々あります。しかし、実際には下記のような細かな部分でさまざまな違いが存在することを覚えておきましょう。

  1. 管轄
  2. 制度目的
  3. 受給条件・申請対象
  4. 支給金額
  5. 募集期間

ここからは、補助金と助成金の相違点について、上記5つの項目に分けて詳しく解説します。

 

1-1. 管轄

補助金と助成金の特に大きな違いが、管轄です。

補助金の主な管轄は経済産業省や地方自治体であり、助成金の主な管轄は厚生労働省となっています。一部では、地方自治体が管轄する助成金もあります。

 

1-2.制度目的

制度を設けている管轄が違うということは、各制度の目的も異なることが伺えます。

多くが経済産業省や地方自治体の管轄となる補助金は、国や各地方自治体の政策を推進することを目的に、その政策に合致した事業を行う企業や事業主を支援することが目的です。

一方で、厚生労働省が主な管轄となる助成金は、従業員の雇用制度や労働環境を整備したり、改善したりした企業や事業主を支援することが目的となります。また、会社設立や創業を行った起業者を支援する助成金も多くあります。

 

1-3. 受給条件・申請対象

補助金と助成金とでは、受給条件・申請対象においても違いがあります。

補助金は受給条件が厳しい傾向にあり、審査に通らないケースも珍しくありません。政策ごとに設けられる補助金の種類によって、受給条件や対象者は細かく異なるものの、基本的には補助金制度の設立目的や趣旨と自身の事業内容・事業目的を合致させる必要があります。

一方で、助成金にも受給条件は存在するものの、条件をいくつか満たせば受け取れる場合がほとんどです。しかし、厚生労働省の管轄下であることから、雇用保険の加入状況や労務管理面は厳しくチェックされる傾向にあります。申請時は労働者名簿や賃金台帳などが必要書類となり、助成金の種類によっては会計帳簿も必要です。そのため、日頃から法律上必要となる帳簿をきちんと整備しておくようにしましょう。

 

1-4. 支給金額

補助金と助成金とでは、全体的な支給金額にも大きな違いが存在します。

補助金は受給条件や審査が厳しい分規模が大きく、支給される金額は億単位となることもあります。一方で、雇用拡大や従業員の能力開発を目的に支給される助成金は、受給条件や審査が緩い分、金額は最大でも100万円程度が多いことが特徴です。

 

1-5. 募集期間

補助金と助成金には、募集期間においても違いがあります。

補助金は数日~1か月といった期間で募集されるため、うっかり見落としてしまったり、申請を忘れてしまったりして申請期間が過ぎると、応募することができません。

一方で、助成金は随時募集となるもの、もしくは長期間での募集期間となることが多いため、比較的いつでも応募できることが特徴です。

 

2. 補助金と助成金には共通点もある

補助金と助成金には多くの違いがある一方で、共通している部分もいくつかあります。各制度の理解をより深めるためにも、違いだけでなく共通点も把握しておきましょう。

補助金と助成金の共通点2つ

・支払いは後払い

・返済が発生しない

ここからは、各共通点をさらに詳しく解説します。

 

2-1. 支払いは後払い

補助金と助成金の支払いは、いずれも後払いとなることが基本です。

補助金と助成金に申請する際は、各制度の受給条件を満たしたり、計画に沿って事業実施・環境改善をしたりした上で、事業計画書や報告書といった申請書類を作成・提出することとなります。管轄の省庁がその報告書を確認してから、初めて交付金が支給されることが一般的です。なお、支給までの期間は補助金のほうが長く、助成金は比較的短い傾向にあります。

このように、補助金制度・助成金制度による交付金支払いは後払いとなるため、「今月は少し資金が厳しい状態だから、補助金や助成金を申請して今月の支出にあてる」といった方法ができない点に注意してください。

 

2-2. 返済が発生しない

補助金と助成金は、いずれも交付金の返済義務がない点も共通している点です。

利益率が5%の企業の場合、50万円の補助金もしくは助成金を受け取ることができれば、1,000万円の売上高を獲得したことになります。返済が発生しない点は非常に魅力的なポイントとなるものの、一部の事業スタイルでは「発生した利益の一部を還元しなければならない」という特約が設けられているなど、実質的な返済義務が発生するケースがあることにも注意してください。

また「不正受給」とみなされた場合、該当事業者は受け取った補助金や助成金をすみやかに返済しなければなりません。不正受給とみなされるケースはほとんどないものの、可能性はゼロではないため、申請前にきちんと受給条件・要件を確認しておきましょう。

 

3. 補助金と助成金の代表例

補助金と助成金にはさまざまな種類があり、通年で応募できるものもあります。補助金と助成金の概要や違いをより詳しく把握するためにも、代表的な例をいくつか見てみましょう。

補助金の代表例助成金の代表例

・IT導入補助金

・小規模事業者持続化補助金(一般型)

・キャリアアップ助成金

・業務改善助成金

最後に、補助金・助成金の各代表例をそれぞれ紹介します。

 

3-1. 補助金の代表例2選

補助金の代表例には、経済産業省からの「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金(一般型)」が挙げられます。それぞれの概要は、下記の通りです。

〇IT導入補助金

IIT導入補助金とは、小規模事業者・中小企業を対象とした、ITツール・システムの導入にかかった経費を補助する制度です。法改正によるペーパーレス化が進む近年、業務効率化や生産性向上を図るべく導入するITツール・システムの導入において活用しておくべき制度と言えるでしょう。

IT導入補助金を受ける場合は、指定のIT導入支援事業者と共同申請を行う必要があります。A・B・C-1・C-2・Dまで合計5つの類型があり、最大で450万円の補助金が受けられます。

出典:経済産業省「IT導入補助金」

〇小規模事業者持続化補助金(一般型)

小規模事業者持続化補助金(一般型)とは、常勤の従業員が20人以下(宿泊業・娯楽業を除いた商業・サービス業の場合は5人以下)の法人または個人事業主を対象とした、新規の販路開拓や商品開発にかかった経費を補助する制度です。

補助率は経費の3分の2で、上限額は単独申請の場合、50万円となります。複数事業者と連携し、共同事業として申請する場合の上限額は500万円です。

出典:経済産業省「小規模事業者持続化補助金(一般型)」

 

3-2. 助成金の代表例2選

助成金の代表例には、「キャリアアップ助成金」と「業務改善助成金」の2つが挙げられます。それぞれの概要・支給対象事業者は、下記の通りです。

〇キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者(有期雇用労働者・派遣労働者など)のキャリアアップを促進する取り組みを実施した企業・事業主に対して助成する制度です。「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」など合計7つのコースがあり、これらのコースはもちろん、企業規模によっても助成額は異なります。

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金」

〇業務改善助成金

キ業務改善助成金とは、新たな設備の導入による労働環境の整備や賃金引上げによる業務改善を図った小規模事業者・中小企業に対して助成する制度です。「20円コース」から「90円コース」まで合計5つのコースがあり、これらのコースはもちろん、賃金を引き上げる労働者数によっても助成額は異なります。

出典:厚生労働省「業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」

上記で紹介した補助金・助成金以外にも、常にさまざまな補助金・助成金制度が打ち出されています。交付金を受け取れる条件を満たすことは、従業員の勤務環境の改善や満足度の向上にもつながるため、まずは一度全国における補助金・助成金制度をチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

補助金と助成金は、どちらも大まかに国や地方自治体などから受け取れる返済不要の交付金であるため、同様の意味として使われる傾向があります。しかし、補助金・助成金とでは管轄や支援制度の目的、さらに受給条件や支給金額などさまざまなポイントで違いがあることを覚えておきましょう。

補助金と助成金にはさまざまな種類があり、募集期間が比較的短いものから、通年で応募できるものもあります。ここまでの内容を参考に、必要に応じて補助金・助成金制度をぜひ活用してください。