遺産分割協議書の作成方法とは?協議を行う際の注意点も解説

遺産分割協議書の作成方法とは?協議を行う際の注意点も解説

遺産を誰と、どのように分けるかの話し合い(遺産分割協議)が終わったあとは、法定相続人全員が遺産分割協議に合意したという内容を取りまとめた「遺産分割協議書」を作成します。

この遺産分割協議書は、法律で作成が義務化されているわけではありません。そのため、遺産を受け取る人が必ず作成しなければならないものではなく、あくまでもトラブルを防ぐための書面となっています。

今回は、遺産分割協議の概要から遺産分割協議書の作成方法、さらに作成時の注意点まで詳しく解説します。遺産分割協議書で悩んだときに相談できる専門家の種類についても触れているため、ぜひ参考にしてください。

 

1.遺産分割協議とは

そもそも「遺産分割協議」とは、誰がどういった割合で遺産を相続するのか、相続人全員で話し合うことを指します。遺言がない場合は、ある程度民法に従って相続人に遺産を分け合うことが基本ですが、相続人が数人いる場合は話し合いが必要です。

また遺産分割協議は、相続人全員が話し合って合意したうえで有効となります。行方のわからない相続人を除外して話し合いを行った場合の遺産分割協議は無効となるため、遺産分割協議の前には、なるべく相続人調査と相続財産調査を行いましょう。

なお、遺産分割協議には期限が定められていません。しかし、相続開始日から10ヶ月以内に行うことが基本です。これには、相続税の申告・納税の期限が大きく関係します。相続税の申告・納付期限は10ヶ月以内であるため、その期限までに遺産分割協議と相続税の申告を済ませておかなければ、特例を受けられないまますべての相続人が相続税を法定相続分で納付しなければなりません。

そして、相続人全員での遺産分割協議が整ったあとは、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。遺産分割協議書とは、遺産分割協議において、相続人全員が合意した遺産の相続割合といった内容を明確にした書面です。

遺産分割協議書は、法律により作成が義務化されているわけではありません。遺産分割協議を作成する目的は、遺産分割協議後のトラブルを防ぐためです。遺産分割協議書を作成していなければ、協議後に相続人の一人が内容に異を唱えると、話し合いが長期化するおそれがあります。スムーズに相続を完了させるため・遺産分割協議後のトラブルリスクを最小化させるためにも、遺産分割協議書は作成しておいた方が良いと言えるでしょう。

また、不動産登記の相続や銀行口座の名義変更の手続き時には遺産分割協議書が必要となるため、これらの遺産を引き継ぐ場合は作成が必須となることに注意してください。

なお、遺産分割協議書は相続人のうち誰か一人が代表して作成するのではありません。被相続人から遺産を引き継ぐ相続人全員が作成します。

 

2.遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書にはある程度のひな形が存在するため、作成の際はひな形を参考に作成しましょう。

■遺産分割協議書のひな形

遺産分割協議書

被相続人
<死亡した人の氏名>(<死亡した日時> 死亡)
最後の住所 <住所>
最後の本籍 <住所>
登記簿上の住所 <住所>

上記被相続人の遺産について、下記のとおり遺産分割協議を実施した。

<協議の日時>、<協議の住所>
<被相続人の氏名>の死亡により開始した相続の共同相続人である<相続人全員の氏名>は、その相続財産について、下記のとおり分割することに決定した。

1. <相続人1の氏名>は、下記の財産を相続する

  • 土地
    所在 <その内容:以下同じ>
    地番
    地目
    地積
  • 建物
    所在
    家屋番号
    種類
    構造
    床面積
  • 預貯金
    預金の種類
    口座番号

2. <相続人2の氏名>は、下記の財産を相続する
<上記の同様の形式で記載する>

(後日判明した財産について)

3. 本協議書に記載のない遺産・後日判明した遺産は、相続人全員がその財産について、再度協議を行うこととする

上記の協議成立を証明するために、署名押印した本協議書を<相続人の人数分>通作成し、各自1通ずつ保有する。

<協議の日時>

住所 <相続人1の住所>
相続人 <相続人1の氏名> <実印>

住所 <相続人2の住所>
相続人 <相続人2の氏名> <実印>

※<~~>内は、その内容を記載する

基本的には、上記のようなひな形に沿って記載すれば問題ないものの、作成の際にはポイント・注意点も存在します。ここからは、遺産分割協議書の作成において特に注目しておきたいポイントを解説するため、作成時のヒントとして参考にしてください。

 

2-1.パソコンで作成できるが署名は自筆で行う

遺産分割協議書は、手書きのほかパソコンを用いて作成することも可能です。むしろ遺産分割協議書は、最終調印までに数回の修正が発生する可能性もあるため、修正が容易いパソコンで作成する方がおすすめと言えるでしょう。

しかし、パソコンで作成する場合も署名は自筆・押印は実印で行わなければなりません。相続人それぞれが遠方に住んでいる場合、自筆での署名や実印での押印をしたあとに修正が入ると再度足を運ばなければならなくなるということも考えられます。そのため、パソコンで作成した遺産分割協議書は、相続人全員がきちんと合意するまで印刷や署名・押印は控えておくことがポイントです。

 

2-2.財産内容や処分方法について正確・具体的に記載する

遺産分割協議書を作成するにあたり、財産内容や処分方法については正確かつ具体的に記載しましょう。具体的に記載しなければ、後々になってトラブルが起こる可能性があります。

例えば、被相続人が不動産を持っていた場合、相続する不動産の住所や種類も記載しなければなりません。記載住所と登記簿謄本に記載されている情報との相違があった場合は無効となる可能性もあるため、必ず登記情報と合っているかを確認しましょう。さらに銀行口座の場合は、銀行名・支店名・口座番号の記載も必要です。

また、相続財産の処分方法についても明確に記載する必要があります。相続財産の処分にあたる費用は、被相続人が抱えていた負債の返済費用や葬儀費用などです。これらの処分内容も、どの項目にどれだけの費用がかかったかを具体的に記載しましょう。

 

3.遺産分割協議書を作成する際の注意点

遺産分割協議書は、適切な方法で作成しなければ無効となる可能性があります。ここでは、遺産分割協議書を作成する際の注意点を紹介します。

〇相続人全員で遺産分割協議を行う

前述の通り、遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。相続人が一人でも欠けていれば、遺産分割協議書を作成しても無効となる可能性が非常に高いです。遺産分割協議後に、被相続人に婚外子、いわゆる隠し子がいることが判明した場合も無効となるため、事前の相続人調査と相続財産調査は欠かせません。

〇判断力の乏しい人が参加する場合は成年後見人を立てて行う

相続人の中に、何らかの障がいや認知症などにより判断力が乏しくなっている人がいる場合は、成年後見人を立てて遺産分割協議を行いましょう。成年後見人を立てずに遺産分割協議を進めると、不利な遺産分割とみなされ、無効となる可能性があるためです。

〇未成年者と親権者がともに相続人の場合は特別代理人を立てて行う

相続人が、「未成年者とその親」となる場合は、特別代理人を立てて遺産分割協議を行わなければなりません。親と未成年の子どもが遺産を分け合うといった状況で、親権者が代理人となると、利益相反行為が起こりやすくなるためです。未成年者の相続人が複数いる場合、人数に応じて特別代理人を立てなければならない点にも注意しましょう。

 

4.遺産分割協議で頼れる専門家の種類

遺産相続は、難しい法律や税金の知識が不可欠です。そのため、スムーズかつ安心して相続を進めるためには専門家の力を借りることをおすすめします。相続問題で頼れる専門家としては、「弁護士・税理士・司法書士・行政書士」が挙げられます。

下記は、相続問題の状況・ケースに応じたおすすめの相談先です。

遺産分割協議で意見の対立がある
弁護士
遺産分割協議で意見の対立がない
(1)相続税の申告が不要な場合税理士
(2)相続財産に不動産がある場合司法書士
(3)相続財産に不動産がない場合行政書士

また、弁護士は基本的にすべての相続手続きをサポートできるものの、費用が高い傾向にあります。意見の対立により長期化している場合や、大きな相続争いとなっている場合を除き、費用面ではおすすめしません。

税理士は登記ができないため、相続税の申告が不要な場合におすすめです。司法書士は不動産の相続において深い知識を持っているものの、相続税申告ができない点に注意してください。そして行政書士は登記・相続税の申告ができないため、遺産分割協議で意見の対立がなく、相続税の申告が不要でかつ相続財産に不動産がない場合に最もおすすめの相談先です。

それぞれの手続きにおいて適切な場所に相談することも可能ですが、複数の専門家に依頼することにより高い費用がかかるだけでなく、手間も増えてしまいます。そのため、まずは税理士に相談・依頼し、その税理士から他の専門家と協力してサポートを受ける方が効率的に手続きを進められるでしょう。

 

まとめ

誰がどういった割合で遺産を相続するのか、相続人全員で話し合う「遺産分割協議」が終わったあとは、相続トラブルを防ぐためにも「遺産分割協議書」を作成しましょう。提出が義務化されているわけではないものの、不動産の相続や口座名義人の変更手続きには、この遺産分割協議書が必須です。

遺産分割協議書は、相続人全員で作成しなければなりません。一人でも欠けていると遺産分割協議書が無効となる可能性があります。このほかにも無効となる可能性のある注意点が多々あるため、作成の際は十分気を付けましょう。

遺産分割協議書の作成をスムーズに進めるためには、まず税理士への相談がおすすめです。ここまでの内容を参考に、ぜひ遺産分割協議についての相談を税理士に行ってみてはいかがでしょうか。