今回は、決算書に含まれる書類のうち、損益計算書について解説していきます。
前回の記事はこちら。
損益計算書とは
損益計算書は、企業の会計期間における営業活動の利益や費用を示す書類です。
(損益計算書の例)
この書類では、「どのぐらい利益を上げ、その利益を得るためにどのぐらい経費を使ったか」が示されています。
「収益」から「費用」を差し引いて、「利益」が算出される構造になっています。
収益の種類
収益には、以下の種類があります。
- 売上高:事業の本業における収益(定款の事業目的に記載ある事項から生じた収益になります)
- 営業外収益:事業外における収益
- 特別利益:臨時多額の利益
費用の種類
収益には、以下の種類があります。
- 売上原価:売れた商品の仕入れや製造にかかった費用
- 販売費及び一般管理費:販売活動、管理活動にかかる費用
- 営業外費用:事業外における費用(借入金利息 等)
- 特別損失:臨時多額の損失
- 税金費用:1年間の利益に対して課せられる法人税、住民税、事業税
ここで注意して頂きたいのが、売上原価です。たとえば、小売業の場合、売上原価は商品の仕入高となりますでしょうか。
答えはNoです。
100円の商品を100個仕入れ、決算までに150円で60個売り上げた会社を考えてみてください。
売上高は、150円で60個売り上げたので9,000円です。
一方の売上原価は、100円の商品を100個仕入れたから10,000円、売上から売上原価を差し引いた利益はマイナス1,000円…
売上高 | 9,000 |
売上原価 | 10,000 |
売上総利益 | △1,000 |
これではおかしいですね。
売上原価は、「売れた商品の仕入れや製造にかかった費用」です。つまり、60個売り上げた場合の売上原価は、
仕入値100円 × 60個 = 6,000円
が正しいのです。
売上高 | 9,000 |
売上原価 | 6,000 |
売上総利益 | 3,000 |
売上原価の算定方法を式に表すと、以下のようになります。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
今回の例だと、
期首商品棚卸高:0円
当期商品仕入高:仕入値100円 × 100個 = 10,000円
期末商品棚卸高:仕入値100円 × 40個 = 4,000円(100個のうち60個は売れたので40個が在庫)
よって、売上原価は、
売上原価=0+10,000-4,000=6,000
となります。売上原価を正しく算定するためにも、決算時の商品棚卸はとても重要なのです。
利益の種類
利益には、以下の種類があります。
- 売上総利益:本業の商品・サービスから直接的に得られる利益(売上高 – 売上原価)
- 営業利益:本業から得られる利益(売上総利益 – 販売費及び一般管理費)
- 経常利益:経常的な企業活動から得られる利益(営業利益 ± 営業外損益)
- 税引前当期純利益:税金を除くすべての収益、費用を含んだ利益(経常利益 ± 特別損益)
- 当期純利益:最終利益(税引前当期純利益 – 税金)
損益計算書のチェックポイント
貸借対照表と同様、損益計算書についても最低限抑えておいて頂きたいチェックポイントを解説いたします。
①金額の前期比較を行う
損益計算書を2期もしくは3期並べて、各項目の額を比較してみてください。売上高の額や利益の額の推移を見てみましょう。売上高・利益ともに増加しているのであれば、概ね順調に成長を遂げていると考えられるかもしれません。売上高・利益ともに減少傾向にある場合は、現状の商品・サービスが衰退フェーズにある可能性があります。売上高が増加しているのに利益が減少している場合は、費用が大幅に増加しているということですので、原因を追究する必要があります。
②利益率の分析を行う
会社を継続的に存続させるためには、利益をできるだけ多く残していく必要があります。売上高に対して効率的に利益が計上できているか、という観点からの分析が利益率の分析です。利益率には以下のものがあります。
- 売上総利益率:売上高と売上総利益との割合(売上総利益÷売上高)
- 営業利益率:売上高と営業利益との割合(営業利益÷売上高)
- 経常利益率:売上高と経常利益との割合(経常利益÷売上高)
- 当期純利益率:売上高と最終利益との割合(当期純利益÷売上高)
会社の利益率を算定して、過去の実績や、同業他社と比較してみましょう。例えば、高付加価値戦略に舵をとった会社であれば、各利益率が過去実績や同業他社と比較して高くなっているはずです。もしそうなっていなければ、戦略がうまくいかなかったことになります。
③損益分岐点を知る
少し難しい話になってしまいますが、こちらも大変重要です。損益分岐点とは、会社の利益が「0」となる売上高を指します。売上高が損益分岐点を上回ると黒字、下回ると赤字になりますので、損益分岐点はとても重要な点です。
損益分岐点を求めるためには、まず、費用を固定費と変動費に分解します。損益計算書上の営業利益は、「売上高 – 売上原価 – 販売費及び一般管理費」で求められますが、売上原価と販売費及び一般管理費をざっくり固定費と変動費に分解するのです。
固定費とは、売上の増減に関係なく発生する費用です。営業成績に比例しない固定給や社会保険料のような人件費、事務所の家賃などが代表例です。
変動費とは、売上の増減に比例して増減する費用です。商品や材料の仕入高、営業インセンティブのような人件費、外注費などが代表例です。
そのうえで、損益分岐点は以下の公式で求められます。(なぜ以下の式で損益分岐点が求められるかという点については、別の機会に解説いたします)
損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 -(変動費 ÷ 売上高 ))
売上高が10,000千円、変動費が7,500千円、固定費が1,000千円の会社の場合、損益分岐点は、
損益分岐点 = 1,000千円 ÷ (1 -(7,500千円 ÷ 10,000千円))= 4,000千円
となり、売上高が4,000千円を下回ると赤字になるということがわかります。
だいたいの自社の現状の損益分岐点がどれくらいかというのは、経営者として知っておくと、売上高の最低必達目標などが根拠をもって設定しやすくなります。
まとめ
今回は、決算書のうち、損益計算書について、その内容と、最低限チェックすべきポイントを解説しました。損益計算書は現状の会社の稼ぐ力を表していますので、予算や経営計画、将来ビジョンの策定にも有用です。前回の貸借対照表同様、適時確認するようにするようにしてください。