法人税は、事業を営む法人に課される代表的な税金の一種です。事業を始めたての経営者の方や、毎年納税しているものの、法人税の細かい内容については詳しく理解できていない方もいるのではないでしょうか。法人税の知識を正しく身につけることで、納税期限超過によるペナルティを防げたり、キャッシュフローを正確に把握できたりといったメリットがあります。
当記事では、法人税の種類や税率、納付方法や期限超過のペナルティ、法人税の節税方法などについて解説します。
1. 法人税とは?特徴や所得税との違い
法人税とは、企業が得た課税所得に課される税金で、法人税法上の「益金」から「損金」を引くことで金額が算出可能です。財務省では、法人税に関して以下のように説明されています。
法人税は、法人の企業活動により得られる所得に対して課される税です。
法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額となっています。益金の額とは、商品・製品などの販売による売上収入や、土地・建物の売却収入などで、また、損金の額とは、売上原価や販売費、災害等による損失など費用や損失に当たるものです。(実際は、企業会計上の税引前当期純利益を基礎に法人税法の規定に基づく所要の加算又は減算(税務調整)を行い、所得金額を算出します。)
法人税額は、そうして得られた所得金額に税率をかけ、税額控除額を差し引くことで算出します。
(引用:財務省「法人課税に関する基本的な資料」)
益金・損金は、企業会計上の収益・費用と似ているものの、計算ルールが部分的に異なります。何故なら、益金・損金は税負担の公平化を目的に計上される数字であるのに対し、収益・費用は企業の業績を正確に把握する目的で計上される数字であるためです。実務上では、企業会計上の税引前利益から、法人税法の規定に基づき加算・減算を行い課税所得金額を算出します。
また、法人税と所得税には、大きく分けて以下の違いがあります。
・法人税は法人に課される税金で、所得税は個人に課される税金である
・課税所得金額に応じて、法人税は15%~23.2%、所得税は5%~45%の税率が適用される(2019年4月以降)
1-1. 法人税の種類3つ
法人税は、大きく分けると以下の3種類があります。なお、一般的に法人税として知られているのは「各事業年度の所得に対する法人税」となります。
各事業年度の所得に対する法人税 | 法人が定めた一事業年度で得た所得額に適用される税金です。事業年度の期間は、1年以内であれば法人で自由に決められます。 |
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各連結事業年度の所得に対する法人税 | 子会社を持つ法人が、グループ全体でまとめて納税を行う場合に適用される税金です。左記の納税方法を選択した場合は、各事業年度の所得に対する法人税への対応は不要になります。 |
退職年金等積立金に対する法人税 | 退職年金等の積立金額に課税される税金で、退職年金に関する業務を営む保険会社・信託会社などが課税対象法人です。景気低迷のため、1999年4月以降の課税は凍結されています。 |
子会社を持つ法人以外は、各事業年度の所得に対する法人税を納付すると考えてよいでしょう。
1-2. 法人税の税率
法人税の税率は、2019年4月以降に開始する事業年度において、以下のように定められています。
法人区分 税率 所得800万円以下の部分 所得800万円超の部分 普通法人 資本金1億円以下 15%(19%※) 23.2% 上記以外 23.2% 23.2% 協同組合等 単体法人 15% 19% 連結親法人 16% 20% 公益法人等 公益社団法人
公益財団法人
非営利型法人
公益法人等とみなされているもの
15% 23.2% 上記以外 15% 19% 人格のない社団等 15% 23.2% 特定の医療法人 単体法人 15%(19%※) 19% 連結親法人 16%(20%※) 20%
※直近3事業年度の平均所得額が15億円を超える場合に適用される税率
一事業年度における800万円以下の所得については、法人税率が低く設定されています。
2. 法人税はいつ支払う?
法人税の申告は年2回必要で、それぞれ確定申告・中間申告と言います。
中間申告は、事業開始2年目から発生する手続きです。原則、前年度支払った法人税の半額を予定納税としますが、仮決算を行い算出した金額を中間納税額として支払うことも可能です。なお、前年度の納税額が20万円未満(予定申告書に記載される納付税額が10万円以下)の法人の場合は、中間申告が不要です。
確定申告・中間申告の申告期限及び納付期限は以下の通りです。
申告期限及び納付期限 | |
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確定申告 | 事業年度終了日から2か月以内 |
中間申告 | 事業年度開始後半年を経過した日から2か月以内 |
例えば、4月1日に事業年度を開始した会社の場合、確定申告分の申告期限・納付期限は5月31日、中間申告分の申告期限・納付期限は11月30日です。
2-1. 法人税の納付方法3選
法人税の納付方法は、主に以下の3つです。
現金 税務署から送付された納付書を使用し、コンビニ・金融機関・管轄の税務署で支払う方法です。コンビニでの納付は、法人税が30万円以下の場合に限られます。 電子納税 e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用し、オンライン上で支払う方法です。e-Taxを利用する場合は、利用届出書を提出する必要があります。 クレジットカード 各自治体のホームページへアクセスし、クレジットカード決済で支払う方法です。各種税金がクレジットカード決済に対応しているか否かは、自治体により異なります。
参考:国税庁「[手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)」
電子納税・クレジットカード決済は領収書の発行がないため、領収書が必要な場合は現金納付を行いましょう。
2-2. 納付が遅れるとペナルティが発生する
法人税の納付が遅れた場合、附帯税というペナルティが課されます。附帯税は主に以下の4つです。
無申告加算税 法人税の申告期限を超過すると課される税金です。 過少申告加算税 申告書の納税額が本来の額よりも少ない場合に課される税金です。税務署から通知が来る前に自主申告した場合は免除されます。 重加算税 無申告・過少申告を税務署が調査した際、法人税の計算に仮装や隠蔽が認められると課される税金です。 延滞税 法人税の納付期限を超過した場合、納付期限日の翌日から納付日までの日数に応じて課される税金です。
出典:財務省「加算税の概要」
重加算税が適用されると、35%~40%の高い税率が課されます。申告時の仮装や隠蔽は絶対に避けましょう。
3. 法人税の節税方法4選
節税は企業にとって重要課題です。うまく節税を行うことで、税負担が軽減できる他、未来の資金繰りにも余裕が生まれます。
節税は、決算間近から始めると取れる対策が限られるため、年間スケジュールを立て計画的に行うことが大切です。ここでは、法人税の節約方法を4つ紹介します。
3-1. 社宅を用意する
経営者の自宅を社宅扱いにしたり、社員に社宅を用意したりすることで、家賃の約50%を経費計上できます。経営者の自宅は、以下の条件を満たすことで社宅扱いが可能です。
- 会社名義で物件を買うか、会社名義で物件の賃貸借契約を結び、会社が経営者に対し物件を賃貸する形式を取る
- 経営者は、家賃を会社に支払う
3-2. 社員旅行を実施する
社員旅行に関しては、旅行の条件を総合的に勘案して最終的に判定されることになりますが、主に以下の条件を満たす社員旅行は、経費計上が可能です。
- 4泊5日以内である
- 職場全体の50%以上の人数が参加している
- 費用が少額である
一人当たりの費用は、10万円以下であれば経費計上できる可能性が高いです。しかし、飛行機でのビジネスクラス利用料金や、スイートルームへの宿泊費などは、社会通念上一般的な旅行内容と認められず、経費計上の対象外となる場合があります。
3-3. 役員報酬を増やす
役員報酬は、以下の3つに該当する給与であれば経費計上が可能です。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 業績連動給与
役員報酬を増やすと、会社は利益が減り節税になる半面、役員個人の税負担は大きくなります。そのため、会社と役員個人の税負担を考慮した金額設定が重要です。また、役員報酬の金額変更は、事業年度開始から3か月以内に行う必要があります。
3-4. 短期前払い費用を支払う
会社が継続的に支払っている費用のうち、1年以内にサービス提供を受ける部分は支払日に費用計上が可能です。これを「短期前払費用」と言い、以下に挙げる費用などが該当します。
- 土地やオフィスの賃借料
- 保険料
- リース料
- サーバー代
- 新聞や雑誌の購読料(電子版のみ)
一度年払いにした費用は、次年度以降も年払いで支払う必要があります。短期前払費用の支払いは、特定の時期にまとまった金額が必要になるリスクも踏まえて検討しましょう。
まとめ
法人税は、法人格や所得金額により税率が変化します。また、事業開始2年目以降は確定申告に加え、中間申告でも納税が発生するため、資金繰りに注意しましょう。法人税の納付方法は、領収書の必要性や手続きの手間を考慮した上で、自分の会社に合う方法を選ぶのがおすすめです。
節税手段は、紹介した4つの方法以外にも多数あります。自分の会社に最適な節税対策を講じたい人や、現在打ち出している節税対策が適切か不安な人は、税理士への相談を検討してください。