会社設立の際の資本金。会社設立のご相談において「いくらが良いですかね?」って質問されることもよくあります。
資本金の額、いくらが妥当かというのを税金面・営業面から検討してみたいと思います。
税金面からの検討
節税のことだけを考えると、1,000万円未満にすべきです。理由は以下の2点になります。
消費税が免税
資本金1,000万円未満の法人は、原則として設立後2年間は消費税の納税義務が免除されます。
1,000万円以上である場合、1期目から消費税の課税事業者となります。
例外として、資本金が1,000万未満の法人でも、1期目の上半期における売上と給与等支払額が共に1,000万円を超える場合には、2期目は消費税の課税事業者になります。
地方税の均等割が最低額になる
均等割とは、資本金や従業員数等、法人の規模によって納める税金です。詳しくは「会社の主な税金」の記事に書いておりますので、読んでみてください。
この均等割、資本金が1,000万円以下であれば、最低額で済みます。下記に例として、神奈川県・相模原市の均等割を記載します。
○神奈川県
区分 | 税率 |
資本金等の額が1,000万円以下の法人等 | 2万円 |
資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下の法人 | 5万円 |
資本金等の額が1億円を超え10億円以下の法人 | 13万円 |
資本金等の額が10億円を超え50億円以下の法人 | 54万円 |
資本金等の額が50億円を超える法人 | 80万円 |
○相模原市(緑区・中央区・南区ともに同じ)
区分 | 税率(区内従業者数が50人以下) | 税率(区内従業者数が50人超) |
資本金等の額が1,000万円以下の法人等 | 5万円 | 12万円 |
資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下の法人 | 13万円 | 15万円 |
資本金等の額が1億円を超え10億円以下の法人 | 16万円 | 40万円 |
資本金等の額が10億円を超え50億円以下の法人 | 41万円 | 175万円 |
資本金等の額が50億円を超える法人 | 41万円 | 300万円 |
御覧のとおり、資本金の額でこんなに変わってしまいます。
営業面からの検討
資本金は会社の規模・信用を測るデータの1つとして重要視されます。そのため、会社を営業する上で、金融機関からの借入、新規取引先との取引、許認可の取得等を行う場合、思わぬ影響を及ぼす可能性があります。
金融機関からの借入
金融機関としても貸したお金を確実に回収するために、会社の元手である資本金は重要視しています。創業融資などを受ける場合は、会社の実績がないため、特にです。資本金によって、「資本金の○倍まで」みたいな形で融資限度額が決まるようなケースも多いので、会社設立と同時に創業融資を検討している場合は、事前に金融機関や税理士に相談の上、資本金を設定すべきであります。
新規取引先との取引
資本金の額は、法務局で履歴事項全部証明書を取得すれば、誰でも確認ができてしまいます。資本金が少なすぎると信用に欠けるため、大手企業とは取引をしてもらえないかもしれません。「会社設立して1ヶ月、資本金は1円」といった会社と積極的に取引をしたいと考えるかどうか、自分の立場になって考えてみてください。
許認可の取得
許認可事業を行う場合には、財産的基礎があることが要件になっていることがあります。必ずしも登記簿上の資本金額を下記の金額以上にしなければならないとは限りません。しかし、会社設立と同時に許認可事業を行う場合には、内部留保利益もないため、資本金で要件を充足するしか財産的基礎の要件を満たすことが難しいです。
- 一般建設業:500万円
- 特定建設業:2,000万円
- 第一種旅行業:3,000万円
- 第二種旅行業:700万円
- 第三種旅行業:300万円
- 地域限定旅行業:100万円
FX口座の開設
FXでの稼ぎを、節税の観点で個人の所得でなく法人に移そうという目的で会社設立を考えている方は要注意です。業者によっては、口座開設要件として最低資本金額を定めており、資本金の額によっては希望の業者で口座開設ができなくなってしまう可能性があります。資本金を決定する前に、直接業者に確認するのが確実です。
まとめ
会社設立時の資本金について、税金面と信用面から検討してみました。
取引先という観点では、私が携わってきた会社様を見る限り、よほどのことがなければ、100万円~300万円程度でも問題なく営業できています。
ですので、税金面を考えても100万円~300万円で検討を開始しつつ、創業融資・許認可・口座開設の絶対的必要条件が出てきた場合は、それに合わせる形で設定することになるかと思います。