個人事業主の方であれば一度は検討されたことがあるのではないでしょうか、『法人成り』。その一番の理由は『節税』だと考えている方が多いと思います。
そこで今回は、前回の『給与所得控除による節税』に引き続き『所得税と法人税の税率の差による節税』について、相模原・八王子の会社設立・創業融資に強い若手税理士が徹底解説します。
個人事業の所得税は累進課税であるため、所得が増えれば増える程、税率が高くなっていきます。現行の所得税の税率は以下のとおりです。
所得金額 | 税率 |
195万円以下の部分 | 5% |
195万円超 ~ 330万円以下の部分 | 10% |
330万円超 ~ 695万円以下の部分 | 20% |
695万円超 ~ 900万円以下の部分 | 23% |
900万円超 ~ 1,800万円以下の部分 | 33% |
1,800万円超 ~ 4,000万円以下の部分 | 40% |
4,000万円超の部分 | 45% |
一方、現行の法人税率は以下のとおりです。
(平成30年4月1日以降に開始する事業年度)
所得金額 | 税率 |
800万円以下の部分 | 23.2%(資本金1億円以下の法人は19.0%) |
800万円超の部分 | 23.2% |
地方法人税率は、法人税額の4.4%となりますので、地方法人税考慮後のトータルの法人税率は以下のとおりです。
所得金額 | 税率 |
800万円以下の部分 | 24.22%(資本金1億円以下の法人は19.83%) |
800万円超の部分 | 24.22% |
一目見ればわかるとおり、資本金1億円以下で法人を設立すると、所得(≒利益)が330万円を超えてきた段階で、法人税率のほうが有利になることがわかります。
実際の数値を使って比較してみましょう。
利益のうち、社長の給与を800万円・来年度以降のための社内留保800万円としたい場合を考えます。
〇個人事業の場合
給与と社内留保の区別がないため、1,600万円に所得税率が課せられ、最も高い部分で33%の税率が課せられます。
〇法人の場合
給与所得600万円(給与収入800万円-給与所得控除200万円)に所得税率、法人利益800万円に法人税率が課せられ、最も高い部分でも20%の税率で抑えられます。
さらに利益が増えた場合はどうなるでしょうか。
利益のうち、社長の給与を1,600万円・来年度以降のための社内留保800万円としたい場合を考えます。
〇個人事業の場合
給与と社内留保の区別がないため、2,400万円に所得税率が課せられ、最も高い部分で40%の税率が課せられます。
〇法人の場合
給与所得1,380万円(給与収入1,600万円-給与所得控除220万円)に所得税率、法人利益800万円に法人税率が課せられ、最も高い部分でも33%の税率で抑えられます。
ただ、33%という税率も結構高いですよね?そこで、社長の給与を、家計を一にする親族で分散させて手元に入れるとしましょう。利益のうち、社長の給与を800万円・社長の配偶者の給与を800万円・来年度以降のための社内留保800万円としたい場合を考えます。
そうするとどうでしょう?社長と社長の配偶者の給与所得600万円(給与収入800万円-給与所得控除200万円)に所得税率、法人利益800万円に法人税率が課せられ、最も高い部分でも20%の税率で抑えられます。
1人で多くの給与を受け取ってしまうと所得が高くなり、結果として個人事業のときと所得税の負担があまり変わらないことになってしまいますが、親族(配偶者や子、両親等)に給与を分散させることで、所得税と法人税の税率の差によるさらなる節税をもたらすことが可能となるのです。親族を役員や従業員として雇用し、給与を支払うことができるのも法人成りの大きなメリットと言えるでしょう。