土地の相続税評価額の計算方法

相続税は、亡くなった人の財産の、亡くなった時の時価に対して課税されます。「時価」とは、簡単に言うと「今すぐ換金したらいくらになるか?」というものです。現金や預金、上場株式などは、その時の時価を誰でもみることができますので簡単です。では、土地はどのように計算されるのでしょうか。

土地の相続税評価額の計算

一方で不動産は大変です。実際に売るわけではないのに、いくらで換金できるかを調べなければいけません。不動産鑑定士に依頼をすれば…ということも考えられますが、鑑定士によって金額に幅も出ますし、相続があるたびに鑑定しているわけにもいきません。そこで、国税庁は財産の評価額を誰でも簡単に計算できるように簡単に計算できる共通ルールを導入しています。それが財産評価基本通達です。

財産評価基本通達とは?

土地の評価は、この財産評価基本通達の基準に沿って計算をしていけば、誰でも計算することが可能です。評価の方法は、路線価方式と倍率方式があり、基本的には路線価方式が採用されますが、路線価方式で評価ができない場合倍率方式で評価します。

<路線価方式>

  • STEP.1
    固定資産税の納税通知書を準備
    毎年4月の終わりごろから5月頃にかけて送られてくる書類です。この書類に、土地の「地積」が載っています。まずはこの地積を把握してください。土地を共有で持たれている人は、その人の持分を把握する必要がありますが、固定資産税の納税通知書に土地の持分は記載されていません。もし不動産の持分がわからなくなってしまった場合には、法務局で不動産の登記簿謄本をとれば、その人の持分が名前と住所の欄で確認できます。登記簿謄本は誰でも簡単にもらえます。
  • STEP.2
    路線価図を準備
    インターネットで「路線価図」と検索してみると、国税庁のホームページから日本全国の地図がでてきます。日本全国の地図から調べたい土地を探していきます。この地図の道路一本一本を見てみると、数字とアルファベットが書いてあります。これが路線価です。たとえば、「130D」と書いてあるのは「この道路に面している土地は、1㎡あたり130,000円です」という意味になります。130という数値に「千円」という単位がつきます。つまり130,000円ということです。アルファベットのA~Gは借地権割合です。借地権の評価をする際に利用しますので、また別の記事でご紹介させていただきます。
  • STEP.3
    地積 × 路線価土地の相続税評価額

    とてもシンプルで簡単です。

 

なお、土地の形が悪い場合や、広すぎる土地の場合などには、この金額から大幅な減額を受けることができます。例えば、同じ路線価で同じ地積の土地が2筆あったとします。その土地はそれぞれ以下のような状態になっています。

  1. 間口15m×奥行15mの正方形の土地
  2. 間口5m×奥行45mの長方形の土地

この場合、全く異なる評価がなされます。②の細長い土地は①の正方形の土地より評価が低くなります。利用のしやすさ等を考慮すれば感覚的にもわかると思います。本来、もっと評価額を少なくできたのに、ご自身で申告してしまうとそこに気が付かず、減額の処理をしないまま税務署に提出してしまうことがあります。土地を相続された方は、一度税理士に相談されることをお勧めします。

<倍率方式>

路線価を調べてみたら、「金額が書かれていない!」という場合があります。この場合には、倍率方式という方法で計算をします。

  • STEP.1
    固定資産税の納税通知書を準備
    納税通知書の「価格」と記載のある金額が「固定資産税評価額」となります(「課税標準」ではありませんのでご注意ください)。「固定資産税評価額」を把握してください。
  • STEP.2
    評価倍率表を準備
    インターネットで「評価倍率表」と検索してみると、国税庁のホームページからすぐでてきます。評価倍率表にて、地名と地目から該当する土地の「倍率」を探します。
  • STEP.3
    固定資産税評価額 × 倍率土地の相続税評価額
    こちらもシンプルで簡単です。

 

※注意すること

地目が田・畑・山林・原野の場合、評価倍率表に倍率ではなく「周比準」「市比準」「比準」という単語が記載されている場合があります。こちらはちょっと面倒です。「周比準」は、『ここは市街地周辺農地で、宅地に比準して評価してください。』という意味です。「市比準」「比準」は、『ここは市街地農地で、宅地に比準して評価してください。』という意味です。「宅地に比準して」というのは、あたかも宅地のごとく、という意味で、市街地に近い分宅地並みに評価してください、ということになっています。ただし農地は農地や山林はすぐに宅地として使用できませんから、造成費相当額を差し引くことができます。
順番としては以下となります。

  1. まず宅地としての評価額を算出
    まず市役所の税務課でその土地の固定資産税路線価を調べます。固定資産税評価額ではなく固定資産税路線価ですので注意して下さい。固定資産税路線価は、実は相続税路線価よりも微に入り細に入り設定されており、倍率地域の農地や山林にもほぼ設定されています。その路線価に宅地の倍率を乗じます。
  2. そこから造成費相当額を控除
    実際に現地を見て計測をするなどの作業が不可欠です。造成費を計算すると、場合によっては①の価額を超えてしまうことがあります。つまり、マイナスになってしまうということです。この場合は0評価ではなく、近隣の「純」のつく農地山林等で評価することになりますから、こちらも市役所の税務課で「単価」を調べます。単価に倍率と地積を乗ずれば相続税評価額となります。ただし市役所に「純農地」や「純山林」と言っても通じませんので、地域を自分で特定しておく必要があります。倍率表を見て、近隣の地域で「純」のつく地域を選べば良いです。「純」がつく地域は、イメージとして山奥にあるような土地であり、一般的に評価額はかなり低くなります。
  3. 市街地周辺農地ならさらに80/100

倍率方式での土地の評価は、算式が「固定資産税評価額×倍率」とシンプルで、ほとんどの場合は路線価方式のように土地の形状に応じた調整は必要ありません。しかし、いろいろ注意すべき点があって、かえって複雑になる場合もあります。特に一つの土地を利用区分に応じて分けるときは、測量が必要になったり、金額の算定で高度な判断が必要になったりします。

まとめ

土地の相続税評価額の算定方法は一見シンプルです。しかし、場合によっては急に複雑になります。また、土地の形によって大幅な減額を受けることができたり、自宅として使っている土地には、相続税の評価額を80%減額できる「小規模宅地等の特例」という制度が用意されていたりと奥が深いものです。土地を相続された方は、一度税理士に相談されることをお勧めします。

(※令和元年9月現在の法律に基づき記載しております)

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